アイゼンをつけての歩行、楽しいですよね。
ただ、慣れていないと引っ掛けてコケてしまったりすると、急斜面では危険です。
いくつか歩行方法がありますので、知識として理解して、現地で意識して歩くことで身に着けていけるといいですね。
やわらかい雪の場合
初心者・初級者が行くような雪山の場合、この歩き方が基本となります。
キックステップ
キックステップは、アイゼン歩行の基本です。
膝から下を振り子のようにして雪に蹴りこみ、雪の斜面に階段(ステップ)を作ります。
できたステップに足を置くので、足の裏は基本的に水平になります。
下りの時には、かかと部分から雪の中に足をグイっと入れて、やはり水平にステップを作るようにします。
蹴りこむときに力は必要ですが、比較的いつも通りに歩く感じですね。
注意点としては、アイゼンを反対の足に引っ掛けないように、両足の間隔を空けて歩くことです。
急な斜面の場合は、つま先を開くと歩きやすいです。
コツとしては、足先や足首を意識するのではなく、腰を2cmほど落として股関節を開くことを意識するといいと思います。
固い雪・氷の場合
固い雪・氷の場合は、蹴りこんでも足裏全体を置けるほどのステップはできません。
蹴りこんで(キックして)アイゼンの歯を氷に食い込ませることはキックステップ同様に重要なのですが、歩行方法は変える必要があります。
フラットフッティング
なだらかで固い雪の斜面の場合は、斜面に対して平行に足を置きます。
水平ではなく、地面に対して平行です。
これをフラットフッティングと言います。
多くの歯を地面に突き刺すということですね。
つま先の向き先はやわらかい雪の場合と同じです。
フロントポインティング
固い雪の急斜面になると、フラットフッティングは現実的にできなくなります。
このときは、アイゼンの先を氷に突き刺すフロントポインティングという歩き方(というより登り方)になります。
気を付けるべき点は、足裏を水平にすることです。地面に平行ではなく水平です。
つま先立ちのようにしたくなってしまうのですが、そうするとアイゼンの刺さっている氷が割れやすくなるので、足裏を水平にすることが重要です。
この歩き方は、足先だけで体重を支えますので、ふくらはぎが非常に疲れます。
スリーオクロック・ナインオクロック
フロントポインティングはふくらはぎが疲れてしまいますので、そこまで急ではない斜面では、フロントポインティングとフラットフッティングを組み合わせた歩き方をします。
片足はフロントポインティング、もう片足はフラットフッティングという歩き方です。
足の形が時計の3時の形になるので、スリーオクロック(3時)と呼ばれます。
左右を入れ替えれば、ナインオクロック(9時)です。
変形スリーオクロック
スリーオクロックで歩いていても、やはりふくらはぎは疲れてしまいます。
そこで、それほど急な斜面でない場合には、変形スリーオクロックという歩き方をします。
体は3時のほうを向いて、12時の方へ進む、という歩き方です。
登山本を見ると、右足は4時の方向、左足は2時の方向、といったように書かれていますが、私は両足ともほぼ3時の方向で歩いています。
気を付けるべき点は2点です。
- アイゼンを逆の足にひっかけやすいので、オレンジの矢印のように、逆の足を迂回する足運びをする
- 上記の例だと右足を移動させる際には左足で体重を支える形になりますが、このときにフラットフッティングする(足裏を斜面に平行にする)のが難しく、滑落しやすくなります。ピッケルをしっかりと刺してバランスを取りましょう。
ちなみに、体の向きを反対にすると、変形ナインオクロックです。
最後に
雪山を歩くのは疲れるので、最初は歩き方を意識できているものの、歩いているうちにふだんの歩き方になってしまい、アイゼンをひっかけてコケてしまう、というのがよくあります。
日常の街歩きで、両足の間隔をあけて歩く、腰を2cmほど落として股関節を開いて歩く、といったことを意識すると、登山時も安定して歩けます。
なかなか大変ですが、急な斜面やリッジ(尖った稜線)を歩くことを見据えると必要になってきますので、確実な歩行方法を身に着けたいですね。