雪山登山の始め方 既存装備での安全なお試し方法&ルート

雪山の写真を見ると美しい。実際に行ってみて、誇張ではなく本当に感激しました。雪山専門になりたいくらいに雪山が好き。
とはいえ、雪山は危険が多く、また装備も高価。雪山はハードルが高いですね。

学生時代に山岳部でもなく、これまで山岳会にも入っていない私ですが、(学生時代の数回の登山を除いて)登山2年目に雪山に行きました。誰かに連れていってもらうのではなく、逆に自分がリーダーとなって家族を連れて。
今から思うと無謀としか言いようがないわけですが、雪山テント泊までする現在から振り返ると、それほど悪くない雪山の始め方だったと思うし、それなりにリスク回避して安全な範囲で雪山を始めていたと思っています。

ということで、雪山の始め方について記載したいと思います。

雪山の危険性

先ほども記載したように、雪山は格別です。

  • 雪に覆われた景色そのものが美しい(雪と青空のコントラストは本当に美しい)
  • 霧氷や樹氷など、雪山ならではの景色が見られる
  • 冬は空気が澄んでいて、遠くの山まできれいに見える
  • 人が少なく、静かな山歩きが楽しめる
  • 雪が音を吸収するので、とても静か

ただ、雪山というと危険というイメージですよね。それは正しい認識なわけですが、どういうところが危険なのでしょうか。

  • 気温が低く、かつ冬は夏に比べて風が強いので、低体温症、凍傷などのリスクが高い
  • 天候が急変しやすく、天候悪化時には数日間身動きできなくなる場合もある
  • 道が雪に覆われて登山道が消えるので、正規ルートを外れて道迷いになりやすい
  • 雪があり、夏道のコースタイムよりも時間がかかる
  • しかも、雪の状態によって歩行スピードが大きく変わるので、予想通りに歩けるとは限らない
  • 日の出ている時間=行動時間が短いので、少し計画が狂うと暗く寒い夜になる
  • 夏山に比べて人が少ないので、いざという時に周囲に頼れない
  • 雪崩の危険がある

リスクだらけ、という感じですね。ただ、リスクがわかれば対処法も明確になります。以下では雪山にどう取り組むべきかをまとめてみます。

雪山登山の最重要ポイント

初心者において、私の考える雪山での最重要ポイントは天気です。
天候が悪化すれば、どんな熟練者でも動けなくなります。スキルも装備も不十分な初心者にとって、雪山に行けるのは快晴の時だけ、です。
もう一度言います。雪山に行けるのは「快晴」の時「だけ」です。
晴れではダメで、快晴です。
快晴の予報でも、予報が外れれば天候が悪化しそうな懸念があるときも、ダメです。

快晴かどうか、予報が多少外れても天候が悪化する懸念がないかは「天気予報サイトの使い方」を見てください。Mountain Weather Forecast、Windy、SCWの3つともを見て、行く山だけでなく周囲100~200km程度の範囲に雲がなく、そして、風速が15m以下である日を狙ってください。
また、必ず前日にも再度チェックをしてください。冬は天気が変わりやすいので。

厳冬期の1~2月は天気が崩れやすいので、3月が狙い目です。
4月も天気が安定していますが、雪がだんだんと汚れてくるので、雪山の美しさ&厳しさを感じるなら3月がいいと思います。

雪山の始め方 計画編

雪山登山の最重要ポイントを守れば、あとは準備と心がけで安全な登山ができます。

まず計画について。

  • 天気予報で快晴の時だけを登山日にする(しつこいですが)
  • 雪山としてメジャーな山に休日に登る
    • この条件なら多くの登山者がいるし、トレースも付いていて道迷いしない
この2つを守れば、先ほど記載した雪山の危険性のほとんどを回避できます。
登山は本来他人を当てにしてはいけないものであり、準備は万全にすべきです。ただ、そうは言っても、トレース(足跡)のない雪道を初心者が行くのは危険です。また、トレースのない雪道を進むのは、ラッセルと言ってビックリするほど疲れます。初心者がやるのは無謀です。トレースをありがたくちょうだいして(「トレース泥棒」と言います)雪山に登りましょう。

では、具体的に初心者にぴったりのメジャーな雪山を挙げてみます。
ここで挙げる山は、以下のように初心者にピッタリです。

  • 雪崩の危険性が低い
    • 初心者が雪崩の危険性を判断するのは難しいので
  • 山頂からの展望がいい
  • しかも、山頂手前まで樹林帯があり、強風・危険にさらされる時間が短い
  • コースタイムが短い
    • 雪山は夏山よりも時間がかかるし、日が暮れるのも早い

では、初心者にぴったりのメジャーな雪山です。

入笠山

  • 富士見パノラマリゾートに自家用車かバスでアクセス。ゴンドラで山頂駅へ
  • 八ヶ岳の大展望
  • 夏山コースタイムは1~2時間
  • (もちろん10本爪以上のアイゼンが望ましいが)軽アイゼン・チェーンスパイクも可
  • ※私は夏しか登ったことがないですが、初心者にはかなりオススメです。


黒斑山

  • アサマ2000スキー場のある高峰高原ホテルに自家用車またはバスでアクセス
  • 浅間山プリンと言われる、浅間山の大展望
  • (もちろん10本爪以上のアイゼンが望ましいが)軽アイゼン・チェーンスパイクも可
  • 夏道コースタイムは3時間
  • 参考 2014/12/23の登山記録


北横岳

  • 北八ヶ岳ロープウェイに自家用車またはバスでアクセス。ロープウェイで山頂駅へ
  • 八ヶ岳や北アルプスの大展望
  • 夏道コースタイムは2時間10分
  • (もちろん10本爪以上のアイゼンが望ましいが)軽アイゼン・チェーンスパイクも可
  • ※常に強風なので防風、防寒対策は万全に。また強風時は登山を避ける
  • 参考 2014/3/22の登山記録

赤城山

  • 赤城神社駐車場などに自家用車でアクセス
  • 上越の山の展望
  • 夏道コースタイムは3時間半
  • ※黒斑山や北横岳よりやや難易度は高い印象。軽アイゼンではなく10本爪以上のアイゼンが必要
  • 参考 2013/3/23の登山記録


美ヶ原

  • 山本小屋に自家用車でアクセス(坂道を登れなくなる車がよく出るので要注意)。または王ヶ頭ホテル宿泊なら送迎バス利用
  • 北アルプス、南アルプス、八ヶ岳の大展望
  • 平原なので、好きなところを歩き放題。好みの場所を好みの時間で。
  • 軽アイゼン・チェーンスパイクも可
  • ※登山というより雪山ハイキング
  • 参考 2016/2/6の登山記録

これらの山からさらに先にステップアップする前に、北横岳にはぜひ登っていただきたいです。北横岳はほとんどの場合、強い風が吹いており、気温も低いです。冬山の寒さ、厳しさを体感し、こうした厳しい環境に数時間ずっといてもいいと思うほど雪山が好きか、と自分に問いかけてみてください。そこでYESとなるなら、高価な雪山装備を買いそろえてよいと思います。雪山はとても美しいですが、身体的にはとても厳しく、好きでなければ耐えられませんので。

これらの山を登った後なら、以下の順序でステップアップするのがいいと思います。

  • 八ヶ岳の天狗岳や蓼科山
    • ややコースタイムが長くなる
  • 群馬の日光白根山や武尊山や谷川岳
    • 樹林帯を超えたルートが長くなる
    • やや傾斜がきつくなる。ピッケル推奨
  • 木曽駒ケ岳
    • 傾斜がきつく雪崩の危険もある。ピッケル必須

雪山の始め方 装備編

雪山装備は高額です。雪山に初めて登るという前から装備を完全に揃えるのは厳しいですし、やっぱり雪山はやめておこうとなるかもしれませんので、装備はできるだけ手元にあるものを使うという前提にしています。
では、具体的な装備品です。

  • 完全防水で厚手の靴
    • 初めて雪山に登る前から雪山用登山靴を買うのはハードルが高いので、快晴で登山時間が短い前提で、GORE-TEXの3シーズンの靴でもOK
  • 厚手の靴下
  • 防水・防寒の服
    • アウター上下はレインウェアかスキーウェアでOKだが、体温調整しやすいように薄手の重ね着を心がける。歩くと思った以上に暑い。
    • ダウンは汗の水分で保温効果が下がるので、防寒はフリースがオススメ
  • 手袋
    • スキー用手袋でOK。防寒が重要
  • ネックウォーマー、耳当て、毛帽子
    • スキー同様に首元の防寒は非常に重要
  • スパッツ
    • 雪に足が潜り込むので、靴に雪が入らぬようにスパッツは必須。最初は夏山用の薄いスパッツでもOK
  • アイゼン
    • 夏山での雪渓用の軽アイゼンやチェーンスパイクでもOK
  • ストック
    • 雪道を歩くのはバランスを崩しやすいし、浮力を補うためにもストックがあるとよい
できるだけ手持ちのもので代用できるといいですが、手持ちのものがなければ普段使いにも流用できるものを買うか、思い切って本格雪山用を買うか、です。
上記のほかは、夏山同様の装備を持参ください。ヘッドライトや予備電池も忘れなく。
※実際に最初の雪山登山でスキーウェアを多用していた様子は、「冬山装備の変遷 親子でスキーウェアから雪山登山服へ」を参照ください。

できれば、事前にスキー場や近場の雪のある場所などで数時間歩いてみて、この装備でいけそうかチェックするといいですね。
私の場合、大雪の後の高尾山に登ってチェックしていました。

雪山に行ってみて雪山を続けたい!となれば、まずは雪山登山靴と12本爪アイゼン、その後に雪山用の服を揃える、といった順番だと思います。

  • ある程度の防寒性能のある4シーズン用の登山靴を持っているなら、しばらくは靴はそのままでOK
  • アイゼンは靴との相性が極めて重要なので、靴を持参してアイゼンと合わせてみて、購入するアイゼンを決めるべき。靴を変えればアイゼンも変えないといけなくなる場合もある
  • アイゼンは一生ものと言うと言いすぎだが長く使うので、どうせ買うなら高いレベルにまで対応できる12本爪がオススメ。足がよほど小さい人でなければ、10本爪を選ぶ理由はないように思う
  • 雪山というとピッケル、というイメージを持つ人もいるが、使い方があまりわかっていないのにピッケルを持っても危ないだけなので、ピッケルは慣れてきてからで十分。また、慣れるまではピッケルが必要になるような山は避けるべき
  • ワカンやスノーシューは行く山に合わせてお好みで。初心者のうちは、トレースがしっかりできていて、ワカンもスノーシューも必要ない山だけ行くべき。
ちなみに、私はモンベルのアルパインクルーザー2500というオールシーズンの靴で、雪山テント泊までこなしています。ただ、やはり足先は冷たくなるので、そろそろ雪山登山靴を買うべきか思案中です。装備についての詳細は、「雪山装備の揃え方 歩行道具」「雪山装備の揃え方 登山服」も参照ください。

雪山の始め方 食事編

私にとって夏山の昼食はカップ麺や袋麺、棒ラーメンです。疲れた体に水分と一体化した麺類は食べやすく、また塩分補給にもなります。

ただ、雪山となると話が変わります。

  • カップ麺に熱湯を入れても、3分待っているうちにお湯は冷めてしまうし、麺も硬いまま
  • 袋麺や棒ラーメンにしても、バーナーで調理している間はじっとしているので、体が冷えてしまう

雪山では歩くと暑いくせに、じっとしていると一気に冷えます。防寒を最重要に考える必要があり、夏山とは食事を変えていく必要があります。

以下が私の雪山での食事&飲料の定番です。

  • 甘い菓子パン
    • おにぎりは凍るので
  • フルグラ
    • 重量当たりのカロリーが高い
    • ボトルに詰めておけば、歩きながらも食べられる
    • 多めに持参して非常食兼用
  • 熱く甘ったるい紅茶
    • これでもか、というほど砂糖を入れる。家では飲めないくらいの甘さの紅茶が登山中はおいしい
    • サーモスの山専ボトルで

雪山ではこまめに飲食し、大休止は避けて体を冷やさない、ということが重要です。
ちなみに、雪山ではハイドレーションも使いません。チューブの中の液体が凍ってしまうためです。

雪山装備の揃え方 飲食関連」も参照ください。

雪山の始め方 登山編

実際に雪山登山をする際に留意すべき点ですが、雪山では少しのミスが生死を左右する、という意識を持つことが非常に重要です。

  • 汗をかかないように、こまめに衣類を調整する
    • 汗で濡れると危険です。天候次第では死に直結します
  • 大休止は避けて体を冷やさない。こまめに糖分・水分を補給する。暖かい水分補給は凍傷予防にもなる
  • 何か危険や違和感を感じたら、迷わず引き返す

たとえば、足をねん挫や骨折した場合。
夏山なら一晩ビバークして時間をかけて下山する、翌日ヘリなど救助に来てもらう、ということができます。
冬山だと夜を迎えるという時点で死が近づいてきます。

自分の気持ちや体に何か違和感を感じる、頭が痛い、雪の状態や天候に危険を感じる、周囲の登山者が何か危険信号を発している、そんなことがあれば初心者のうちは迷わず麓まで引き返しましょう。わずか30分の遅れが大きな意味を持ちます。できるだけ早く安全地帯に戻ることが重要です。

また、初心者で装備が不十分な場合、おそらく一番気になるのが手先・足先の冷えです。歩いていると足先が冷たくなり、そのうち痛くなってきます。それが続くと逆に痛みもなくなり、凍傷になります。凍傷がひどくなると、指を切断することになってしまいます。
と言って、最初から雪山登山靴を買うのもハードルが高すぎですよね。

まず最初は、前述のオススメの山から始めてください。
登山時間3~4時間程度で、快晴で、主に樹林帯の登山なら、凍傷になる危険性は低いです。
暖かい水分をこまめに取り、大休止を取らず体を動かして温めていれば、大丈夫だと思います。
それでも、もし足先が冷たくなり、痛くなり、その痛みがなくなってきたときは、危険信号です。速やかに下山して温めましょう。

終わりに

きれいだけど危険な雪山。「快晴」の時「だけ」雪山としてメジャーな山に休日に登る。そして、何か危険や違和感を感じたら、迷わず引き返す。天候をよく見て雪山にトライしてみてください。

さらなるステップアップは、以下を参照ください。

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