雪山登山はなぜ八ヶ岳が多い? アルプスの雪山の危険度を知る

雪山初心者ステップアップ レベル別ルート紹介」では、雪山ルートとして、上越や八ヶ岳、中央・北アルプスの山を紹介しました。
雪山の本や雑誌を読むと、雪山ルートとして出てくるのは八ヶ岳が多く、北・中央・南アルプスはあまり出てきません。
これには理由があって、やはりアルプスの雪山は色々な点で難しいからです。
今回は、雪山における山域の違いについてご紹介します。

アルプスは気象面で難しい

雑誌「山と渓谷」2016年12月号に、わかりやすい説明があります。

雑誌「山と渓谷」2016年12月号より

西高東低の気圧配置になると北風が吹き、北アルプスから南アルプスまで雪が降ります。
その後冬型が弱まってくると、南の方から天気が回復してきます。
結果として、1週間のうち好天になるのは、北アルプス北部では1~2日、八ヶ岳や南アルプスでは3~4日と、大きな違いが出てきます。
また、北アルプスでは降雪が多いのでラッセルに苦しめられますが、八ヶ岳ではラッセルすることはあまりありません。
同様に、降雪により北アルプスでは雪庇や雪崩のリスクが高いですが、八ヶ岳はリスクを抑えられます。

アルプスはアプローチが大変

八ヶ岳は、冬季も登山口までの道路が開通しており、自家用車でアクセスできます。
一方、アルプスは冬季閉鎖道路が多く、手前に駐車して登山口まで歩いてアプローチしなければいけないところが多いです。

また、八ヶ岳は森林限界を超えてからのルートが短いのに対し、アルプスは森林限界を超えてからのルートが長い、つまり強風にさらされたりホワイトアウトによる道迷いなどの危険度が高いということがわかります。

雑誌「山と渓谷」2016年12月号より
雑誌「山と渓谷」2016年12月号より

また、八ヶ岳は冬季営業小屋が多いのですが、アルプスの冬季営業小屋は非常に少ないです。

  • 八ヶ岳の冬季営業小屋
    • 南八ヶ岳
      • 美濃戸口:八ヶ岳山荘、美濃戸高原ロッヂ
      • 美濃戸:赤岳山荘
      • 赤岳近辺:赤岳鉱泉、行者小屋(週末のみ)、赤岳天望荘
      • 夏沢鉱泉
    • 北八ヶ岳
      • 本沢温泉
      • しらびそ小屋
      • 根石岳山荘(週末のみ)
      • 黒百合ヒュッテ
      • 麦草峠近辺:高見石小屋、麦草ヒュッテ
      • 白駒池:青苔荘、白駒荘
      • 北横岳ヒュッテ(予約時のみ)、縞枯山荘
  • 南アルプス
    • 甲斐駒ヶ岳七丈小屋
  • 中央アルプス
    • ホテル千畳敷
  • 北アルプス
    • 八方池山荘
    • 西穂山荘
    • 位ヶ原山荘@乗鞍

これを見ると、いかに八ヶ岳の環境が整っているかがわかりますね。

まとめ

これらを表にまとめてみると、以下のようになります。

  北アルプス 南アルプス 八ヶ岳
気象条件 風雪が長く続く。1週間で晴天は北部で1~2日、南部は2~3日。 冬の晴天率が高い。1週間で晴天は3~4日のことも。晴れても風が強く、気温も低い。 冬の晴天率が高い。1週間で3~4日晴天のことが多い。晴れても風が強く、気温も低い。
積雪 日本海に近い北部ほど大雪でラッセルに苦しめられる。雪崩、雪庇など危険箇所も多い。 1~2月は比較的少ないが、2月後半以降は多い。樹林帯ではラッセルに苦しめられる。 アルプスに比べて少なく、雪崩の危険も少ない。降雪直後を除きラッセルすることは少ない。
地形 森林限界以上の範囲が広く、アイゼン必須の箇所が広い。岩場や氷雪の危険箇所も多い。 稜線近くまで樹林帯に覆われている。岩場などの難所は少ない。 氷雪に覆われた箇所も多いが、全体的に小規模。体力的に比較的楽に登れる。
森林限界 2200~2500m 2700m前後 2500m前後
アプローチ 唐松・五竜と穂高あたりは比較的便利。その他はアプローチが悪い。 ほとんどアプローチが悪い。 非常に便利で少ない労力で本格的な雪山登山が可能。
営業小屋 少ない 少ない

多い。
多くのルートが小屋から日帰りで登れる。

トレース 登山者は少なく、トレースは期待すべきでない 登山者は少なく、トレースは期待すべきでない 登山者が多く、降雪直後でなければトレースが期待できる
総合評価 天候判断、雪崩、雪庇などの対処が難しく、クライミング技術も必要 クライミング的な難しさは少ないが、体力面、雪山テント技術など総合力が必要 体力面や雪山テント技術やリスク判断が弱くても、岩場や氷雪のクライミングを味わえる

上越の山は?

谷川岳や武尊山、日光白根山といった上越の山は、北アルプスに似た気象条件で、 天候判断、雪崩、雪庇などの リスク判断が本来必要です。
ただ、アプローチがよく、人気のルートなら登山者多数でトレースができるため、そのトレースを利用する=他人任せにすることで、ある程度のカバーはできます。
上越の人気ルートで経験を重ねた上で、少しマイナーなルートに挑戦してスキルアップするというのもいいでしょうね。

最後に

八ヶ岳は、雪山のクライミング技術を磨くのに最適ということがわかりますね。
八ヶ岳で経験を積んでからアルプスへとステップアップしていくのがいいと思います。

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