「雪山登山の始め方 既存装備での安全なお試し方法&ルート」で、スキーウェアなど既存装備をできるだけ活用して雪山登山しやすい雪山ルートをいくつか紹介しました。
今回は、そうした初心者からレベルアップしていく際の雪山ルートを中心に紹介します。
初級者ルート
お試しで雪山登山をしてみて、雪山を続けたい、ステップアップしたい、となると、雪山装備を揃えていきましょう。
「雪山装備の揃え方 歩行道具」「雪山装備の揃え方 登山服」などを参考にしてください。
こうして雪山装備を揃えて、次に登る山をご紹介します。
ここからは、10本爪以上のアイゼン必須で、ピッケルも持参すべきです。
赤城山
- 赤城神社駐車場などに自家用車でアクセス
- 上越の山の展望
- 夏道コースタイムは3時間半
- 山頂近くまで樹林帯
- 参考 2013/3/23の登山記録
累積標高(上り): 1085 m
累積標高(下り): -1046 m
日光白根山
- 丸沼高原スキー場に自家用車でアクセスし、ロープウェイ利用
- 上越の山の展望
- 夏道コースタイムは4時間50分
- 山頂近くまで樹林帯
- 下記のコースがトレース多く安心。七色平や座禅山近くのコースは避けるべき
- 参考 2015/1/25の登山記録
累積標高(上り): 1436 m
累積標高(下り): -1423 m
谷川岳
- 谷川岳ロープウェイに自家用車または電車&バスでアクセスし、ロープウェイ利用
- 新幹線の上毛高原駅または沼田駅からバスあり。土合駅から徒歩も可能
- 上越の山の展望
- 夏道コースタイムは4時間20分
- 早々に森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 天神平と熊穴沢避難小屋の間に小さな雪壁あり。ここが怖いようであれば、雪上歩行訓練を繰り返すべき。
- 参考 2015/2/21の登山記録
累積標高(上り): 1277 m
累積標高(下り): -1275 m
武尊山
- 川場スキー場に自家用車でアクセスし、リフト利用
- 新幹線の上毛高原駅または沼田駅からスキーバスもあるが、時間が遅くなるためオススメできない
- 上越の山の展望
- 夏道コースタイムは3時間30分
- 西峰と剣ヶ峰の間のリフトトップからスタート
- 通常はリフトトップからリフトに乗って下山。以下の地図ではスキーに履き替えて滑り降りている
- 早々に森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 剣ヶ峰の先の下りがやや急
- ここの下りを怖がらずに難なく下れるようにならなければ、次のステップに進まないほうがよい
- 参考 2017/3/12の登山記録
累積標高(上り): 766 m
累積標高(下り): -1328 m
蓼科山
- 白樺高原国際スキー場に自家用車でアクセスし、ゴンドラ利用
- 八ヶ岳や北アルプスの展望
- 夏道コースタイムは4時間20分
- 南西のスズラン峠からの登山もOK。ただ、スズラン峠の駐車場がすぐ満車になるので要注意。
- 山頂直下の急登は要注意。ここが怖いようであれば、雪上歩行訓練を繰り返すべき。
- 途中から森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 参考 2018/3/11の登山記録
累積標高(上り): 997 m
累積標高(下り): -1005 m
天狗岳
- 渋の湯に自家用車でアクセス
- 茅野駅からバスもあるが、時間が遅くなるためオススメできない
- 八ヶ岳や北アルプスの展望
- 夏道コースタイムは6時間30分
- 唐沢鉱泉から西尾根をたどるルートもあるが、やや難度が高め
- コースタイムは長いが、下図のルートがオススメ。体力に自信がついてからにしたい。時間に余裕があれば、西天狗まで足を延ばす
- 途中から森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 東天狗から西天狗への登りの傾斜はやや急。
- この登り下りを怖がらずに難なく下れるようにならなければ、次のステップに進まないほうがよい。
- 渋の湯から西天狗まで足を延ばすルートを日帰りで行けるかどうかは、体力面も含め、次のステップに進めるか、ちょうどいいチェックになる
- 参考 2013/3/30の登山記録、2013/4/28の登山記録
累積標高(上り): 1616 m
累積標高(下り): -1614 m
中級者ルート
上記の初級者ルートを難なくこなせるようになれば、以下のルートに挑戦してみましょう。
もちろんピッケル必須です。
※これを「中級者」と言うかどうかは、どのレベルを上級者と設定するかに依存しますね。ここでは「上記の初級者ルートの次のステップ」という意味で使っています。本来は、5段階の2段階目くらいかと思います。
木曽駒ケ岳
- 菅の台バスセンターに自家用車でアクセス。バス、ロープウェイを利用
- 朝イチのバスに乗れるようにしましょう
- 御嶽山、南・中央・北アルプス、八ヶ岳の展望
- 夏道コースタイムは3時間40分
- 最初から森林限界を超えるので、強風・悪天時は山行をやめる
- 千畳敷から乗越浄土への登りの傾斜は急で、雪崩の巣。
- ピッケル必須
- 前日の降雪、降雨など、雪崩を警戒しましょう
- さらに次のステップに進む際には、宝剣岳にも足を延ばしましょう。ただ、危険なので安易に挑戦しないこと。
- 参考 2016/2/11の登山記録
累積標高(上り): 1677 m
累積標高(下り): -1693 m
赤岳
- 美濃戸口に自家用車か電車・バスでアクセス
- 茅野駅からバスもある
- 八ヶ岳や北・中央・南アルプス、富士山の展望
- 夏道コースタイムは9時間20分。1泊2日推奨。
- 途中から森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 赤岳山頂直下の登り・下りの傾斜は急で、岩場混じり。また、行者小屋と地蔵の頭の間の地蔵尾根は雪の状態によりナイフリッジになるので要注意。
- 自分で危険と判断したら撤退すること。
- 参考 2017/12/23の登山記録
累積標高(上り): 2539 m
累積標高(下り): -2542 m
赤岳~横岳~硫黄岳 周回
- 美濃戸口に自家用車か電車・バスでアクセス
- 茅野駅からバスもある
- 八ヶ岳や北・中央・南アルプス、富士山の展望
- 夏道コースタイムは11時間20分。1泊2日推奨。
- 途中から森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意。特に硫黄山荘近辺は強風帯。
- 赤岳山頂直下の登り・下りの傾斜は急で、岩場混じり。また、横岳あたりも岩場混じり。
- 自分で危険と判断したら撤退すること。
- 参考 2014/12/27の登山記録
累積標高(上り): 3050 m
累積標高(下り): -3074 m
日光白根山 from 日光湯元
- 日光湯元に自家用車でアクセス
- 上越の展望
- 夏道コースタイムは8時間30分
- それほど人が歩いておらず、ラッセルを覚悟すべき。コースタイムを読みづらいので、撤退時間を決めておくべき。
- ワカンかスノーシュー必須
- 五色山や座禅山などのルートは人がほとんど入らないので、要注意。
- 以下の地図では五色山や座禅山を周回しているが、そちらには行かずに南側から山頂を目指すべき
- 途中から森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 参考 2017/1/22の登山記録
累積標高(上り): 2876 m
累積標高(下り): -2872 m
焼岳
- 中の湯温泉旅館に自家用車でアクセス
- 本来宿泊者のみ駐車可能。事前に旅館に電話して駐車可能か要確認
- 乗鞍、槍・穂高の絶景!
- 夏道コースタイムは5時間40分
- 夏道は北峰に行くルートだが、積雪期は南峰に行くべき。
- 以下の地図では北峰にも行っているが、その途中の谷間は雪崩が起きやすいので要注意
- 広場から南峰への登りの斜面も雪崩が起きやすい。慎重な判断を。危険と判断した際には、広場手前から樹林帯を通って南峰を目指す
- 途中から森林限界を超えるので、強風・悪天には要注意
- 参考 2016/3/12の登山記録
累積標高(上り): 3009 m
累積標高(下り): -2992 m
唐松岳
- 白馬八方尾根スキー場に自家用車でアクセス。各種スキーバスでもアクセス可能。八方尾根スキー場のゴンドラ、リフトで八方池山荘へ。
- 五竜・鹿島槍や白馬、立山・剱の絶景!
- 夏道コースタイムは7時間40分
- 帰りのリフトに間に合うように、撤退時間を決めておくように。
- ほぼ森林限界を超えているし、晴天時以外は登山をやめるべき
- 唐松岳頂上山荘直前の小さな雪壁は要注意。
- 参考 2017/1/28の登山記録、2018/4/29の登山記録
累積標高(上り): 1513 m
累積標高(下り): -1559 m
乗鞍岳
- 休暇村乗鞍高原横の駐車場に自家用車でアクセス
- スキー場のリフトも使用できるが、登り始めが遅くなってしまうので、リフト稼働前から登り始めることをオススメ
- 槍・穂高の大展望!
- コースタイムは10時間程度。
- 夏道ではなく、下記のルートを通る。スキー上のゲレンデの脇を歩き、リフトトップからはツアースキー用(BC=バックカントリースキー用)のルートを通って肩ノ小屋まで行く
- ロングルートのため、雪山登山の体力に自信がついてからにすべき。
- 位ヶ原山荘あたりから森林限界を超えるし、そのあたりはホワイトアウトすると方角がわからなくなるので、晴天時以外は登山をやめるべき
- BCスキーヤーが多数。
- 参考 2016/3/20の登山記録
累積標高(上り): 2543 m
累積標高(下り): -2527 m
西穂高岳
- 新穂高ロープウェイに自家用車でアクセスし、ロープウェイを利用。
- 穂高の大展望!
- 夏道コースタイムは7時間40分
- 帰りのロープウェイに間に合うように、撤退時間を決めておくように。
- 西穂山荘から先は森林限界を超えるし、晴天時以外は登山をやめるべき
- 独標の前後の登り・下りで恐怖を感じるようであれば、撤退すべき。
- 独標以降は狭いルートを通るため、雪庇崩落など滑落の危険が常にあり、毎年滑落者が発生している。安易に入るべきではない。
- 参考 2018/3/3の登山記録
累積標高(上り): 1270 m
累積標高(下り): -1277 m
参考:初心者ルート
最初に記載した初級者よりも前の段階として、初心者向けのルートを紹介します。
「雪山登山の始め方 既存装備での安全なお試し方法&ルート」にも記載しましたが、ここで挙げる山は、以下のように初心者にピッタリです。
- 雪崩の危険性が低い
- 初心者が雪崩の危険性を判断するのは難しいので
- 山頂からの展望がいい
- しかも、山頂手前まで樹林帯があり、強風・危険にさらされる時間が短い
- コースタイムが短い
- 雪山は夏山よりも時間がかかるし、日が暮れるのも早い
では、初心者にぴったりのメジャーな雪山です。
入笠山
- 富士見パノラマリゾートに自家用車かバスでアクセス。ゴンドラで山頂駅へ
- 八ヶ岳の大展望
- 夏山コースタイムは1~2時間
- (もちろん10本爪以上のアイゼンが望ましいが)軽アイゼン・チェーンスパイクも可
- ※私は夏しか登ったことがないですが、初心者にはかなりオススメです。
黒斑山
- アサマ2000スキー場のある高峰高原ホテルに自家用車またはバスでアクセス
- 浅間山プリンと言われる、浅間山の大展望
- (もちろん10本爪以上のアイゼンが望ましいが)軽アイゼン・チェーンスパイクも可
- 夏道コースタイムは3時間
- 参考 2014/12/23の登山記録
美ヶ原
- 山本小屋に自家用車でアクセス(坂道を登れなくなる車がよく出るので要注意)。または王ヶ頭ホテル宿泊なら送迎バス利用
- 北アルプス、南アルプス、八ヶ岳の大展望
- 平原なので、好きなところを歩き放題。好みの場所を好みの時間で。
- 軽アイゼン・チェーンスパイクも可
- ※登山というより雪山ハイキング
- 参考 2016/2/6の登山記録
北横岳
- 北八ヶ岳ロープウェイに自家用車またはバスでアクセス。ロープウェイで山頂駅へ
- 八ヶ岳や北アルプスの大展望
- 夏道コースタイムは2時間10分
- (もちろん10本爪以上のアイゼンが望ましいが)軽アイゼン・チェーンスパイクも可
- ※常に強風なので防風、防寒対策は万全に。また強風時は登山を避ける
- 参考 2014/3/22の登山記録
これらの山からさらに先にステップアップする前に、北横岳にはぜひ登っていただきたいです。
北横岳はほとんどの場合、強い風が吹いており、気温も低いです。
冬山の寒さ、厳しさを体感し、こうした厳しい環境に数時間ずっといてもいいと思うほど雪山が好きか、と自分に問いかけてみてください。
そこでYESとなるなら、高価な雪山装備を買いそろえてよいと思います。
雪山はとても美しいですが、身体的にはとても厳しく、好きでなければ耐えられませんので。
最後に
レベルに応じた雪山ルートをご紹介しました。
夏山と異なり、雪山は雪の状態や天候によって大きく難易度・必要時間が変わります。
あらかじめ撤退時間を決めておくべきです。
そして、天候をよく見て、無理せず、雪山登山を楽しみたいですね。